会計顧問は尊いパートナーであるべき

我々経営者が、会計顧問、とりわけ中小企業において顧問税理士に期待するのは何でしょうか。おそらくは、「節税」が一番人気か二番人気だと思います。

しかし、「節税」と「脱税」は違う。

大前提は、払うべきものは払わなくてはならない。 少なくとも私はそう考えています。社員の方々は、問答無用で給与天引がかかっており、ビタ一文誤りなく義務の履行をされているところ、経営者がたとい法人のためという場合であっても、払うべきものを払わなくてよいはずがない。 脱税は、ケチるとかいう話ではない。立派な犯罪であり、私は、経営者失格だと考えています。

払うべきものはきちんと払ったうえで、本業で収益を高めていくこと。これが基本的な経営者の考え方だと思います。

では、節税とは何か。これは、思うに、現制度上で払わなくて問題ない場合に払わなくて済むようになることです

我が社が設立して最初に契約した顧問税理士(法人)は、補助員のみ来訪し、法人代表の税理士本人は一度たりとも我が社に訪問することはなく、その補助員から語られることは、どうやって経費を上乗せするかとか(うちの会社は割とシンプルな費用体系なので、仕入れなどで架空計上は、絶対無理ですので、しようにも出来ないし、したくもない)、売り上げが上がったら速攻で分社化し、消費税の軽減を模索するなど、どうみても課税逃れ分割としか言えない提案しかしてきません。とりわけ分社化の話は、有機的一体性があるものを分割する機会費用など考えたこともないらしい。

顧問先の契約は、別の役員に一任していましたので、私は設立時は法務局巡りをしていました。今思うと、契約前に一度「品定め」をしておくべきでした。しかし、当時は経理のイロハもまったく分かって無くて・・・。結局、我々役員が責めをおうべきものです。

こんなのが、節税と言えるのだろうか。そう思ったときには、私の専断で、もう、別の税理士さんの問い合わせフォームに入力が終わっていました。セカンドオピニオンの結果、顧問契約の解除を検討しました。

セカンドオピニオンを受け、仮に顧問契約をするとしたら、どのような形になるか、という話を新税理士(現顧問)と話をしている最中、「分社化の稟議について、お話をしたい」と連絡を当該補助員から受けたので、いつも弊社会議室での面談が常だったのですが、敢えて、「貴事務所」でお話を伺いたい、と出向くことにしました(そこでいくつか質疑応答し、ろくな答えが返ってこないようなら、税理士本人を呼び出し、そこで解除の話をする覚悟で)。その面談のログです。諸賢はどうお考えになりますか。

 

補助員「消費税の『節税』のための稟議書類です。結論としては、分社化しましょう。」

「具体的にはどのようなものをお考えでしょうか。」

補助員「貴社は、大学受験部と高校受験部の2部門をお持ちですが、こちらを完全に分社化するのです。そうすれば、分社化した片方が免税事業者となって2年間消費税は免税となりまして、それから・・・」

(補助員を遮って)「いや、そういう税効果の話ではなくて、現行有機的一体となっている組織をどうやって分断するのです?部門兼任当たり前、新しい会社にはまた役員を置かなければならないし、帳簿だって別になりますよね。」

補助員「それはですね、雇用契約をそれぞれで締結し直していただいて、社長はそうですね、現役員以外の方から出していただいて、現役員の方は社外取締役として就任していただき、その報酬を受けていただければ。」

「正直、社長適任者はまだ不在です。経理だって私が今のところ一手に担ってますが、帳簿を2つつけることになります。なにより、消費税課税逃れの分社化は否認の対象になりませんか。」

補助員「社長はぶっちゃけ、現役員のうち1名が退任して、では分社後の新会社の社長に就任するのはいかがですか。あと、帳簿は2つにはなりますが、内容は変わらないので、ファイルが2つになるだけです。」

「うーん・・・」

補助員「消費税逃れの否認のリスクはあります。実際そうですしね。しかし、うちはその辺実績がありまして。」

「(実績だって?やば、こいつ。)例えば?」

補助員「例えば、賃貸オーナーなどが複数の物件を管理しているとき、それぞれの物件を複数の会社で運営する形など、否認された試しは一度もありません。他に、コンビニ経営とかですね。あと・・・」

「ちょっといいですか。その事例はウチとはずいぶん畑が違うように思います。部門兼任当たり前ですよ。顧客の方だって、中高一貫在籍されることが普通なのに、いちいち契約をそれぞれで締結して、ってバレバレでしょう?マンション管理やコンビニとは勝手が違いますよ。」

補助員「あ、まあ、確かにそのような事例は初めてですが、でもご安心下さい」

「ちょっと待って。何を根拠に。」

補助員「お宅の規模であれば、問題ないってことです」

「お宅の規模で、って言いました?あのね、うちがこの規模のままって思ってます?言いましたよね、これまでも。私は誠実にやって、もっともっと成長をしなければならない、って。仮にもっと大きくなったらどうするんですか。」

補助員「・・・(書き起こすのもばからしいので、略)」

「畑違いの事例を出し、お前の会社はこの規模止まりといい、そして、私が思うに、否認リスクは極めて高い。どう考えても、有機的一体性が見え見えです。これ、脱税でしょ?ストレートに言うと。そして、いつまでもあなた話さないけど、顧問料はそうすると、倍額ですよね。こっちは手間も倍になる。そしてめでたく脱税犯だ。」

補助員「いや、新会社の顧問料は8ガケで、と思ってました。手間もそんな、倍だなんて」

「もういい。実はセカンドオピニオンでこちらもいろいろ検討しました。代表をここへ呼んで下さい。あなたでは話にならない。」

 

その後、代表は「補助員の焼き回し」。同じように詰め寄ると、ただ、ペコペコと空疎な謝罪を述べるばかり。

めでたく解除です。即時解除の違約金条項もご丁寧にあったが、債務不履行解除を申しつけました。脱税指南は債務不履行ですし、こんな感じでは「信頼関係破壊」で委任契約の解除やむなしでしょう。違約金払えというなら訴えを起こすつもりでした。

その後、現顧問と契約し、帳簿の見直しに着手してもらいました。出るわ出るわのミス連発(社保料の変化をスルーして(ちゃんと資料は添付している)、前年のコピペだったり、購入した物件価格の情報を1桁!間違っていたり源泉徴収簿に転記ミスがあったり、なんにもチェックしていない。税理士は印鑑押しただけ。把握すらしていない)。顧問料全額の返還請求もできました(訴えるつもりで準備していましたが、和解を申し出てきました。訴訟にでもなって、税調入ったら、税理士としても終わる、と思ったのでしょうか)。

税理士も多種多様。しかし、本気で会社を育てようと思うなら、なくてはならないパートナー。「払うべきものはきちんと払うべき」で、上手に法制度をアップデートし、制度上適法な節税に明るい税理士(探せばいるものですよ!)、税理士選びは本当に重要です(至極当然の結論)。そして、何より、会社の肝心要は、経理の正確さと効率化です。ここに顧問の意義がある。節税は二の次なのです。

しかし、この至極当然さは、どれだけ浸透しているのだろう。と数ある広告を見て、感じたのでした。

現顧問は、ITにも大変明るく、めでたくクラウド会計デビュー。経理作業が10分の1になりました。おかげで本業に注力する時間が割けるようになり、会社は成長しています。

もし、いい税理士をおさがしでしたら、ご紹介しますよ。仲介手数料なんて取りません(笑)。現顧問には大変お世話になっているので、恩返し。

あれから、1年半。いい勉強でした。