「やがて君になる」について(2)

 1週間ほど、漫画を読む時間もあまり取れずにいましたが、アニメ版を見まして、一挙公開分をAmazon Primeで見てしまった今日この頃です。

 第6巻のラストに、コップから水があふれて、「想いは―どうなる」という第7巻の予告を前に、これまでの描写をしっかり味わってみよう、と思っております。

 とはいえ、まだ他の百合漫画に手を出すことはしておらず、百合漫画というジャンルについてどうこう言う資格もなく、たまたま、主観的に、「すごい漫画が百合漫画だった」というに過ぎず、純粋に素晴らしい作品として「やが君」を見た、というに過ぎない。

 (これを契機に、とおすすめの百合漫画を教えてくれる方もいるのですが、ごめんなさい、紹介された作品名、忘れてしまいました。)

ddnavi.com

 

(以下、引用)

──全体としては、どれぐらいのところまで来ているのでしょう。

仲谷:8割ぐらいでしょうか。決めていたゴールに向けて、必要なことを必要なだけ描いているつもりです。いよいよ最終章に入るぐらいの気持ちなので、ぜひ見守ってほしいです。

(引用終わり)

 

 

 と、ここで派生した考えを一つ。ここからは「やが君」とは離れます。

漫画(に限らず、作品の)「最終章」について。

 私は、舞台や映画も割と見る人種で、特に舞台は結構シュールなものから、一人芝居、大人数ものまで時間とインスピレーションで見に行きます。漫画も、長く愛読しているのは藤子作品や手塚作品、野球漫画など。こち亀(とりわけ二桁巻まで)も好きですかね。

 

 藤子作品やこち亀ではあまり縁のない「最終章」ですが、この最終章ってどういう形をみなさん望まれるのでしょうか。

 ひぐらしシリーズや藤子A作品など、救いのない超バッドエンドな展開や東京大学物語のような夢オチも市民権としてあると思いますが、個人的に、そう、個人的にとお断りした上で、あまり好みません。基本的には幸せになって欲しいし、そうでなくてもあまりキッツい終わり方だとしんどい。

 その意味では、例えば高校の生徒会長の座を巡る野心漫画「帝一の國」などは、巧いな、と思いました(たんなる野心家ではないところがまたいいわけですが)。生徒会長選挙に負けはしたが、「負けたのと勝たせたのは違う」というのを見事に首相に返り咲かすあたりが実に面白くありました。

 とはいえ、天邪鬼的なところもありまして、あまり口当たりのいい最終章となると、幸せに終わっても、それまでの話の積み重ねが何かをそいでしまうのではないかという勘ぐりをする読み手で、実にめんどくさい。

 これは舞台にも言えることでありまして、結構見に行く劇団では、ライブでは結末がよく分からない、というものもあります。敢えて作家が観劇側にそう投げている気もするところが実に堪らないわけで、しばらくいろいろ考えた上で、映像などでもう一度見て、伏線の回収から始め、その意図に気づくときなどもう、祝祭的興奮を禁じ得ない(何を言っているのでしょう)。

 そんな感じで、口当たりのいいオチをつけられてしまうと、「うん、良かったね」って思うのですが、なかなか記憶に残らず、という形になってしまうことがあります。

 世間から怒られるのを承知で、敢えて言うなら、聖地巡りなどで社会現象となった飛騨髙山を舞台とした例のアニメ映画などは、口当たりがよいというか、鑑賞しつつ時を隔てて同じiPhoneが使えるのだろうか、などと考える余地があるなどdetailがやや雑な感じというか、情景描写も気になった関係で、ちょっとストーリー全体がすでに記憶からピンボケしています。絵はきれいでしたけどね(遠い目)。

 中には、最終章を完全丸投げするようなものもたまにはあって油断しててぶん殴られるような衝撃的なものもありはします(「ゴドーを待ちながら」とか、それが傑作と言われる所以でしょう)が、最終章の在り方って本当に難しいんだろうと思います。

 今回、仲谷さんのインタビューはその意味で、本当に、実に期待を抱かせてくれます。これまでにない何かが見られるかもしれないと、伏線や情景描写、機微をゆっくりと回収しながら、いろいろ考えて、最終章を待っている状況です。

「必要なことを必要なだけ書く」ことは本当に難しいと思いますが、「コップがあふれるまで」についてもそのお力をひしと感じました。

 また、「やが君」に戻った?この拙文も結局結論はどうなんだ、という意味においても、「最終章」に向けていかないといけないわけですが、結論は、あまり考えていませんでした。必要なことを必要なだけ書くことは難しい。

 

 でも、なお、これは言えるかな。

 口当たりの良さをとってつけることは蛇足である。口当たりが良いこと自体は別に良い、とってつけることがまずいのだ。

 

 テレビドラマだと、逃げ恥などは、口当たりの良さのある終わり方でしたが、上手でしたよ。

デスノートは、続編が本当に不要でした

白い巨塔も続編が本当に不要でした

 

↑とってつけた論評ではないのか(この記述自体が蛇足ではないのか(この記述も・・・))。